売上集計や利益計算など便利な機能を持つPOSレジですが、導入前の疑問点としてよく挙がるのがPOSレジを導入したときの会計・税務処理の方法です。POSレジは固定資産として資産計上しますが、正しく計上するには耐用年数や減価償却などの専門用語の理解が必要です。
当記事では「耐用年数」や「減価償却」といった会計用語の解説とともに、POSレジ導入のために知っておきたいPOSレジや周辺機器の耐用年数について詳述します。加えてPOSレジの購入・リース・レンタル時のメリットとデメリットについてもご紹介します。
POSレジ導入前に理解しておきたい会計用語
POSレジ導入前に知っておきたい会計用語は、「固定資産」「減価償却」「法定耐用年数」の3用語です。
固定資産
「固定資産」とは、企業が長期間にわたって保有・使用する資産や、1年以内に現金化・費用化できない資産のことです。これに対して1年以内に現金化できるものは「流動資産」となります。POSレジは原則として固定資産扱いです。
固定資産は以下の3種類に分かれます。
・有形固定資産:土地・建物・車両・機械設備など
・無形固定資産:ソフトウェア・特許権・意匠権・営業権など
・投資その他の資産:長期貸付金・投資有価証券など
固定資産を取得したときは、固定資産台帳への登録が必要です。取得時に以下の項目を記載しましょう。
・資産名称関係:固定資産の名称・資産番号・資産区分・数量
・取得価額:購入費・手数料・荷役費など固定資産を購入したときにかかった全費用
・取得年月日:固定資産を使い始めた年月日
・設置場所:固定資産を設置した場所や住所
・耐用年数:法定耐用年数
・償却方法や償却率:税務署に届出した償却方法や償却率
・帳簿価額:固定資産の帳簿価額
減価償却
減価償却とは、時間経過によって徐々に減っていく固定資産の価値に合わせ、経費を分割して計上する会計処理です。
たとえば事業用トラックを500万円で購入したとき、その事業年度内で500万円すべてを経費にはしません。事業用トラックの場合は、5年間に分けて計上します。
減価償却の対象になる資産の条件は次のとおりです。
・使用可能期間が1年以上の減価償却資産(時間経過で価値が減る事業用資産のこと)
・取得価額が10万円以上の資産(10万円未満のものは消耗品費として計上)
原則としてPOSレジも減価償却の対象となります。
減価償却する費用を計算するには、「定額法」と「定率法」のどちらかを用います。簡単でわかりやすいのは定額法です。以下では定額法による、減価償却の具体例をご紹介します。
定額法とは、「固定資産の取得価額×償却率」で出た金額を1年分として、法定耐用年数に応じて毎年計上する方法です。「償却率」は聞き慣れない言葉かもしれませんが、単純に「1÷法定耐用年数」の数値です。たとえば法定耐用年数が2年であれば0.5、3年であれば0.334となります。
先述のトラックの例だと、500万円×償却率0.2=100万円を、5年間にわたって減価償却費として計上します。なお有形固定資産は、償却の最後に残存簿価として1円の価値が残ります(無形固定資産は0円)。
簡単な例は次のとおりです。
法定耐用年数
法定耐用年数とは、税務上で減価償却資産を使用できると見込まれる期間のことです。「減価償却資産の耐用年数等に関する省令の耐用年数表」にて、数百種類以上の資産の期間が具体的に決められています。
減価償却は、原則として法定耐用年数と同じ年数で行います。ただし修繕によって資産の使用可能期間が伸びたり、同一の資産でも使用環境によって期間が異なったりなど、例外も存在します。
期間の適用は、資産の使用開始から効用喪失日までです。効用喪失日とは、減価償却資産の会計上の価値が0円になる日を意味します。
なお法定耐用年数は、メーカーが指定する耐久年数(寿命)と同じではありません。たとえばPOSレジの場合、法定耐用年数を過ぎて資産価値が税務上で0円になっても、性能に問題なければ引き続き使用できます。実際の耐久年数は、使用部品の耐久力や使用環境、稼働状況に左右されます。
POSレジと周辺機器の法定耐用年数
「POSレジ本体」「POSレジシステムが入っている端末」「POSレジ周辺機器」には、それぞれ法定耐用年数が耐用年数表にて定められています。
POSレジ本体の法定耐用年数
飲食店・小売店で使用するPOSレジシステム本体の法定耐用年数は5年間です。耐用年数表の「事務機器・通信機器」に分類されます。なお法定耐用年数はPOSレジの購入価格や搭載機能では変化せず、一律5年間です。
パソコン・タブレット端末の法定耐用年数
POSレジには、POSレジの機能を搭載したパソコン・タブレット端末タイプがあります。パソコンやタブレット端末の法定耐用年数は4年間です。
最初からPOSレジ機能を搭載した端末の場合は4年間で減価償却します。後から端末にPOSレジ機能を追加したときは、端末4年とPOSレジ5年(このPOSレジ本体はソフトウェア扱い)で、別々に減価償却する必要があります。
パソコン・タブレット端末型のPOSレジは、従来のPOSレジと比較すると低コストで導入可能です。たとえば弊社のPOSレジ「ユビレジ」は、市販のiPadにPOSレジアプリをインストールして利用します。
そのため、もしパソコンやタブレット端末を10万円未満で購入できれば、事業年度中に全額を消耗品費として計上することも可能です。開業初年度で資金繰りに苦労しているときの節税方法として有効といえるでしょう。
周辺機器の法定耐用年数
POSレジと一緒に使う周辺機器の法定耐用年数は5年間です。POSレジと同じく、事務機器・通信機器に分類されます。POSレジの周辺機器としては、主に以下のものが挙げられます。
・レシートプリンタ
・キャッシュドロワ(金銭をしまう金庫)
・バーコードリーダー
なお、ここまで解説した法定耐用年数の扱い方や経費処理の方法は、POSレジの導入の仕方によって変わります。POSレジは、購入以外にもリースやレンタル契約を利用した導入が可能です。購入・リース・レンタルでそれぞれ経費処理の方法や利点が違うので、自店舗に合うやり方を選んでください。
POSレジを購入・リース・レンタルするメリットとデメリット
POSレジの導入方法として代表的な、購入・リース・レンタルについて、それぞれのメリット・デメリットを解説します。
POSレジを購入するメリット・デメリット
購入したPOSレジは、原則として固定資産となります。
POSレジを購入するメリットは、手続きや会計処理を含めたトータルコストをおさえることができる点です。購入の場合、リースやレンタルのような定期的な契約料が発生しないため、契約料支払いにともなう経費処理や仕訳作業の労力が省けます。
一方、POSレジを購入するデメリットは初期費用が高額になる点です。たとえば、ターミナル型POSレジの価格は100万円を超えることもあります。また故障したときの修理代や、買い替え時の端末購入費用なども考慮しなければなりません。
ただし注目したいのは、購入によるPOSレジ導入は「生産効率を向上させるITツール導入」として、国や自治体から補助金を受けられる可能性があることです。IT導入補助金や小規模事業者持続化補助金などの支給要件に該当しないか、一度確認してみてください。
こちらの記事も参考にしてみてください。
▶︎ POSシステムのメリットとデメリットは?会計業務を効率化して便利に!
POSレジをリースするメリット・デメリット
リースとは、借り手に代わって物品を購入したリース会社が、その物品について賃借契約を結ぶ取引のことです。契約前にはリース会社による審査があります。リース取引で取得したPOSレジは、原則としてリース資産として資産計上します。
POSレジをリースするメリットは、購入するより初期費用をおさえられる点です。また月々の支払いが、レンタルするより低額で済む傾向があります。導入するPOSレジの種類を、借り手側が指定できるのも利点といえるでしょう。
一方、POSレジをリースするデメリットは途中解約が困難な点です。リース契約は数年単位の長期契約を結ぶことが多いですが、その間は原則として途中解約はできません。もし資金繰り悪化や廃業で途中解約したいときも、残リース料や残リース相当額の違約金を支払う必要があります。
POSレジをレンタルするメリット・デメリット
レンタルとは、日や月単位での短期利用・一時使用を原則として、物品を借りることです。レンタルしたPOSレジは購入やリースと違い、固定資産の対象にはなりません。
POSレジをレンタルで導入するメリットは、購入の場合と違い、減価償却の必要性がない点です。減価償却費や固定資産税にかかわる事務作業が発生しません。またリース契約と違い、短期で契約を終了することも可能です。将来的にPOSレジを購入するまでのつなぎとして、レンタルを活用することも有効でしょう。
一方、POSレジをレンタルで導入するデメリットは、リース契約より月額料金が高い傾向がある点です。長期使用を見込むときは、購入やリースのほうがトータル的に安く済みます。またレンタルできる機種は、レンタル会社が取り扱うものしか選べません。
POSレジの耐用年数は5年!自店舗に合う導入方法のご検討を
POSレジの法定耐用年数は5年です。POSレジを固定資産として計上した際は、5年間に分けて減価償却します。法定耐用年数と実際の耐久年数は別物であるため、取り扱い方や使用環境などによって機器寿命は変わります。
POSレジを導入する主な方法は、購入・リース・レンタルの3種類です。それぞれにメリット・デメリットがあるため、事業の将来設計や資金繰りの状態などと照らし合わせて、自店舗に合う導入方法を検討しましょう。
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