各地区でバラバラだったレジをタブレットPOSレジに統一。大学生協が挑んだ3000台のレジ刷新プロジェクトの舞台裏
(本記事は日経ビジネス電子版にて2024年3月1日より公開した内容を日経BPの許諾を得て掲載しています)
近年、タブレットPOSレジのイメージが大きく変わりつつある。これまでは利便性やコスト削減といった手軽さもあり「小規模向け」と捉える人も少なくないはずだ。しかし最近は大規模向けの導入も増えてきた。その好例とも言えるのが大学生協事業連合の事例だ。同組織では、業務効率化とサービスレベルの標準化を目的に、ユビレジのタブレットPOSレジを導入。多くのカスタマイズ要件を満たしつつ、大規模な稼働を実現させた。これは従来のタブレットPOSレジではあまり例を見なかった点だ。導入後は運用コストの削減以外にも、現場オペレーションの負荷削減、利用者の利便性向上といった数々の成果が見えつつあると言う。以下ではその取り組みの舞台裏を紹介したい。
組織改編を機にPOSレジをタブレットに統一
売店、書店、食堂などの運営を通じ、大学や高等専門学校などの学生・教職員の快適なキャンパスライフをサポートする大学生活協同組合(大学生協)。その大学生協を支える事業の基盤組織が、北海道・東北・東京・東海・関西北陸・九州の6つの事業連合が合併することで2018年に発足した生活協同組合連合会大学生協事業連合(大学生協事業連合)だ。
以前は地区ごとに別々の業務システムが導入されていたが、オペレーションの合理化と保守・運用コスト低減の目的から合併を機に統合することとなり、大規模な刷新プロジェクトが計画された。その中で、重要なポイントの1つとなったのが、各店舗の販売管理を担うレジである。各地区で異なるPOSレジが使われ、各会員大学生協が運用する電子マネーやポイント制度は、それぞれのレジシステムにひもづいていた。
「大学生協間のサービスレベルを標準化するには、バラバラだった仕組みを一本化する必要があると考え、すべてのPOSレジを統一することを決めました」と話すのは、情報システム部の山口 久幸氏だ。
大学生協事業連合が新しいPOSレジに求めた条件は、導入・運用コストがリーズナブルであることに加え、フレキシブルであることだ。 大学生協の購買や食堂の各店舗は、昼休みなどに学生の利用が集中するものの、それ以外は原則としてそれほど混まない。そうした中に、開発費・運用費、さらにメンテナンス費用も高い巨大なレジがたくさん並んでいる状況は、非常に非効率だと感じていたという。
「そこで目を向けたのが、大きな設備投資を必要としないタブレットPOSレジです。クラウドで提供されるため、メンテナンスやアップデートを一括管理でき、消費税率の変更やインボイス制度の発足のような法改正への対応もスムーズになります。数社のベンダーの製品を比較検討して、ユビレジが候補に挙がりました」(山口氏)
ユビレジは、直感的で分かりやすいiPadをPOSレジとして活用できるため、未経験のスタッフでもすぐに操作に慣れることが期待できる。また、売上データがクラウド上に保存され、インターネット環境があればいつどこからでもアクセスしてリアルタイムに多角的な分析ができるのも特長だ。
さらに導入を後押ししたのが、ユビレジが企業として持つ優位性である。そもそも従来までのタブレットPOSレジは、基幹システムとの連携や、多様な要件に合わせて開発することはあまり想定されていない。これに対し、ユビレジは多くの開発案件に関わってきたノウハウやナレッジを生かし、開発を前提としたシステム案件として取り組んだのだ。 実際、山口氏 も「お声がけした企業の中で、要件に対応できると反応してくれたタブレットPOSレジ企業はユビレジだけでした」と振り返る。
独自の電子マネーへの対応をはじめ、多様な要件を満たす柔軟な対応力と開発力
大学生協事業連合がユビレジを活用するにあたっては、クリアすべきいくかの要件があった。その1つが、税区分への対応だ。食料品や書籍なども扱う店舗では、品目ごとに内税・外税、軽減税率、非課税・不課税などの処理を厳密に行う必要がある。また、会員大学生協ごとに運用されていた電子マネーが、スマートフォン向け大学生協アプリに内包される大学生協電子マネーに移行 することも重要なポイントだった。
ユビレジは、最新の オールインワン決済端末や独自の電子マネーをはじめ、POSレジを連携させるためのカスタマイズ開発をアドオンで実施。一部の大学で運用されていたICカード学生証による電子マネーの決済にも対応した。
「それ以外にも短い期間の中で、 たくさんのカスタマイズ要件や改修・改善要望があったのですが、それらを柔軟に受け止め対応してもらえました」(山口氏)
昼休み時の店舗の混雑緩和に向け、セルフレジの導入も大事な要件だった。その依頼に応え、ユビレジとして初となるセルフレジの開発も並行して進められた。
臨機応変のサポート体制で難局に対峙
こうしてユビレジは2022年9月に東京地区の会員大学生協で先行導入され、2023年1月には東京以外の5地区でも運用が開始された。現在、約220校のおよそ1000店舗で、合計3000台以上が稼働。決済オペレーションの効率化、利用者の購買体験の向上を図っている。
ユビレジのサポートチームは大学生協専用の操作マニュアル作成に全面協力するなど、大学生協事業連合を多角的に支援。機器のセッティング完了後は店舗で稼動初日の営業を見守り、予期せぬアクシデントなどに備えた。
「セッティングから初日の営業まで含めて現地に一緒に同行してもらう中、即座に対応していただくなど、大変助かりました」と同じく情報システム部の内赤 尊記氏は語る。
だが、すべてが順風満帆に進んだわけではなかった。2023年1月に東京以外の地区でユビレジが稼働した際、ランチタイムに会員大学生協マネーで支払う利用者が集中した店舗で決済に思いのほか時間がかり、行列ができてしまったのだ。
「こうした状態が続くようでは、店舗が最も混む4月の入学時期に困ったことになると懸念していたところ、当時開発中だったセルフレジに搭載される仕組みを有人のPOSレジにも載せてはどうかと提案され、それによってだいぶ緩和することができました」(内赤氏)
店舗での活用やセルフレジの普及にも期待
今後、ユビレジは大学生協でどう活用され、利用者にどんな価値をもたらすことになるのか。両氏は次のように展望を口にする。
「ユビレジが導入されて有人レジでの運用に慣れてきた今、セルフレジの活用を本格化させるための環境を作っていきたい。使い勝手に関するユーザーからの声を生かして操作性をいっそう高めつつ、より多くの店舗に導入することで、さらなる混雑緩和につなげたいですね」(内赤氏)
「ユビレジが展開するモバイルオーダーのサービスである『ユビレジQRオーダー&決済』の仕組みをうまく使えば、お客様がモバイルアプリで事前に決済してから弁当や商品を受け取るといったことも可能になるはずです。ユーザーエクスペリエンスの向上はもちろん、無駄な接触を減らし、スピードや利便性を向上させる意味でも、そうした活用を工夫していきたいと思っています」(山口氏)
タブレットPOSレジの運用はまだ緒に就いたばかり。今後も、大学生協事業連合ではさらなる利便性向上に向け、ユビレジと二人三脚で取り組んでいく考えだ。