セルフオーダーシステムとは？

セルフオーダーシステムとは、飲食店のお客様がスマホやタブレットを使って、自分で料理をオーダーしてくれるシステムです。

人手不足が深刻化している飲食業界では、セルフオーダーシステムのニーズは年々高まっています。人件費削減だけでなく、業務効率化や売上アップなど、さまざまな導入効果をもたらしてくれるシステムではありますが、デメリットがないわけではありません。ですからそれを理解したうえで導入することが重要です。

そこでここでは、セルフオーダーシステムの特徴や導入メリットとデメリット、導入の際の注意点、そしておすすめのシステムについて詳しく解説します。

飲食店経営者や店長の皆さんは、ぜひ参考にしてください。

セルフオーダーシステムとは

セルフオーダーシステムとは、飲食店などで、お客様がタブレットなどの専用端末のタッチパネルを自分で操作して、直接メニューを注文することができるシステムのことです。最近は、居酒屋や回転寿司、食べ放題の焼肉店や、飲食店のテイクアウト注文用などに導入されているケースも多いので、見たことがある人もいることでしょう。

セルフオーダーシステムには2種類あり、店舗側が用意するタブレットを使う「テーブルトップオーダー（TTO）」と、お客様自身のスマートフォンを使う「モバイルオーダー」があります。

なお、店員がお客様から注文を取り、ハンディターミナルなどの手元の端末でオーダーを通すシステムは「オーダーエントリーシステム」と言い、セルフオーダーシステムはこのシステムが派生したものだと言えます。

セルフオーダーシステムの仕組み

セルフオーダーシステムは、POSレジと連動して、注文から会計までを一元管理することができます。システムの仕組みは以下の通りです。

1. お客様が専用端末から料理などを注文
2. 注文内容がキッチンプリンターから印刷
3. ホールスタッフが料理を提供
4. お客様が「オーダー終了」ボタンを押すと会計データがPOSレジに連動
5. レジに会計が表示される

注文伝票なども端末で確認でき、店舗全体のデジタル化ができます。

またセルフオーダーシステムはどの会社のサービスでも、無線でオーダーを飛ばします。そのため、ほとんどの場合は、店内に専用のネットワーク環境を用意する必要があります。

飲食店の業務効率化と人手不足解消に役立つ

セルフオーダーシステムは、ホールスタッフの負担を減らし、業務効率化と人手不足の解消につながります。

お客様自身が注文をすることでオーダーミスが減り、店全体のオペレーションが改善できます。また、メニューには料理だけでなく、お茶や水、箸やおしぼりといった備品も登録できます。料理の提供以外にも、ホールスタッフがデシャップと席を行き来する手間を省けます。

こうした業務効率化の結果、少ない人数でも質の高いサービスを提供できるようになり、スタッフのストレス軽減や定着率の向上など様々な課題の解決が期待できます。

セルフオーダーシステム紹介

セルフオーダーシステムは、スマレジやAirレジといったPOSレジシステムと連動しているものが主流です。ここでは一例として、多くの飲食店に支持されている会計アプリ「ユビレジ」と連動可能な株式会社イグレックの「iPadセルフオーダーシステム」について解説します。

機器構成イメージ

以下はセルフオーダー構成イメージです。専用のWi-Fi環境内にて安定した運用が可能です。

セルフオーダーシステムのメリット・デメリット

それでは、セルフオーダーシステムのメリットとデメリットについて解説します。

近年、セルフオーダーシステムを導入している店舗が増えていることからもわかるように、セルフオーダーのニーズは年々高まっており、さまざまなメリットがあります。しかし、デメリットがないわけではありません。導入の判断をするためにも、両方をしっかり把握しておきましょう。

セルフオーダーシステムの導入メリット

まず、こうしたメリットが考えられます。

• ホールスタッフの人件費削減
• スタッフの教育コストを軽減
• オーダーミスやトラブルを減らせる
• 店舗の売上アップ
• メニュー表の作成・変更が容易になる
• 自動で滞在時間管理ができる
• 多言語対応ができる
• デジタルならではのコミュニケーションや表現ができる

ホールスタッフの人件費削減

セルフオーダーシステムの最大の導入メリットは業務効率化によって「ホールスタッフの数が減らせる」ということです。スタッフが注文を取る必要がなくなるため、単純にスタッフの人数は半分で済み、当然人件費削減につながります。

特に、飲み放題や食べ放題を導入している店など注文数の多い飲食店では、セルフオーダーシステムの導入はスタッフの負担を大きく減らすことができます。それまで注文を取りに行くために使っていた時間を他の業務に使うことができるようになり、サービスレベルを向上させ、顧客満足度を高めることも可能です。

スタッフの教育コストを軽減

セルフオーダーを導入すれば、注文を取るための教育は原則としては不要になります。新人は料理名や提供手順を覚えることに集中でき、新人の研修時間が大きく削減し、即戦力となる店舗スタッフの育成を効率化できます。

注文をお客様自身で入力することでコミュニケーションの齟齬も減り、人手不足に悩む店舗はもちろん、外国人スタッフを多く採用している店舗にも最適です。

オーダーミスやトラブルを減らせる

さらに、オーダーテイクから料理を運ぶまでのトラブルを減らせる可能性が高まります。まずお客様が自分でオーダーするので、オーダーミスが原則としてなくなります。もちろん、システムの使い方がわからない、説明が不正確などのクレームが出る可能性はありますが、オーダーミスに比べれば非常に少ないでしょう。

さらに、お客様が好きなタイミングで直接キッチンへオーダーができるため、それだけ提供スピードも上がり、満足度が上がります。

店舗の売上アップ

セルフオーダーを導入することで、お客様が心理的に注文しやすくなり、結果として注文数が増えて売り上げ向上につながるメリットがあります。特に忙しい時間帯には、スタッフが対応に追われて捕まらず、注文の機会を逃してしまうことも少なくありません。セルフオーダーであれば、お客様が好きなタイミングで必要な量を自由に注文できるため、機会損失を防ぎ、売り上げアップが期待できます。

メニュー表の作成・変更が容易になる

セルフオーダーシステムがメニュー表になるため、メニューブックのデザイン費用、印刷費用がかからなくなり、メニュー作成の作業時間も大幅に軽減します。

そのため、頻繁にメニューを入れ替えたい飲食店にも最適です。ます。たとえば、1週間限定メニューを掲載したり、注文の少ない新メニューをすぐに下げたりすることで、売上の動向を見ながら柔軟にメニューを登録、変更できます。

時間管理などが自動でできる

席での滞在時間の管理などができるシステムもあります。特に飲み放題や食べ放題などの時間制限のあるメニュー展開をしている場合、手書きやタイマーで時間管理をして、制限時間前にお声がけに行くなどの対応をする必要がありました。セルフオーダーシステムではそうしたお知らせを端末から行うことが出来るため、声かけ業務を効率化できます。

多言語対応ができる

セルフオーダーシステムなら、近年増加しているインバウンド需要に向けた対策ができます。外国人のお客様のオーダー取りには苦労するスタッフも多く、どうしても時間が取られがちです。多言語切り替えができるシステムであれば、あらかじめ外国語対応のメニューを作っておくことで、外国人のお客様にも安心していただきながら、スムーズに料理を提供できるようになります。

デジタルならではのコミュニケーションや表現ができる

動画などでメニューや食材のPRを強力に行えるため、客単価アップが期待できます。

ゲームなど搭載できるシステムもあり、子供連れのお客様が落ち着いて食事ができたり、そのゲーム目当てのお客さまが来店したりといった、集客効果もあります。

セルフオーダーシステムの導入デメリット

人手不足解消など、多くの導入メリットがある一方で、どんなデメリットが考えられるでしょうか？

セルフオーダーシステムには以下のようなデメリットもあります。

• お客様とのコミュニケーションの機会が減る
• 客単価が減少する可能性がある
• 機械ならではのトラブルが発生する
• 機械が苦手な層に不評を買うことも

お客様とのコミュニケーションの機会が減る

今までホールスタッフが担っていた接客力を発揮する機会が減る可能性があります。飲食店が伸ばすべき3大要素であるQSC（Q＝品質、S＝接客、C＝清潔さ）のうちのSの半分がシステム任せになるので、店によっては大きな痛手になることもあるでしょう。

ホールスタッフとお客様の交流の接点が減ることで、店舗スタッフやスタッフの接客が気に入ってリピートするというケースも減る可能性もあります。接客の丁寧さを強みにしている店であれば、魅力も半減してしまいます。

ただし、注文を取るために使っていた時間を他のクオリティを上げる時間に使えるようになるので、工夫次第で、より深いコミュニケーションを取れるかもしれません。

客単価が減少する可能性がある

客単価が減少する可能性もあります。セルフオーダーシステムは「注文数が増えて売り上げアップ」という効果が見込める一方で、客単価が下がっているケースも少なくありません。

客単価が減少する理由は、以下のようなものがあります。

• 注文時におすすめメニューの推奨ができずアップセルやクロスセルが利かなくなる
• 心理的に安いコースやメニューを注文しやくすくなる

現に、水がセルフオーダーシステムで注文できるようになったことで、ドリンクのオーダーが半分以下になったというケースもあります。

客単価の問題を解決するためには、メニュー表示の自由度が高いセルフオーダーシステムを導入したり、配膳時のコミュニケーションを工夫したりする必要があります。

機械ならではのトラブルが発生する

機械特有のトラブルが発生することもあります。まず、タブレット自体が故障する可能性もあります。特にお客様側にある機械は乱暴に扱われる可能性があることも考慮しなければなりません。

また選んだシステムによっては、このようなデメリットもあります。

• メニュー画面の融通が利かない：
  紙のメニューで大きく目立たせていた原価の安い推奨商品が、ほかの料理と同じウェイトでしか表示できない
• 金額の外税表示、内税表示が選べない
• すでに導入しているPOSレジと連携できない

このような事態を防ぐため、セルフオーダーシステム導入時には、メニュー表示のデザインやPOSレジとの互換性、そして非常時に対応できるサポート体制の有無を確認すると安心です。

機械が苦手な層に不評を買うことも

最近は高齢の方でもスマートフォンなどを使いこなし、タブレット操作に慣れているケースもありますが、一方ではやはり勝手がわからなかったり、タブレットに表示される料理ごとのボタンを押し間違えてしまい、違う料理が来てしまったりするなどの不満も発生しています。

年齢層の高いお客様に安心して利用していただくためにも、文字サイズの変更が柔軟にできたり、直感的に操作できるセルフオーダーシステムを選んだりするなど、極力メニューの見やすさと使いやすさにも配慮したシステムを検討するのが重要でしょう。

導入の検討は慎重に行いたい

ここまで、セルフオーダーシステムのメリットとデメリットを解説してきました。

セルフオーダーシステムの導入は、多くの場合、業務効率化による人手不足の解消と人件費の削減が目的です。それは確かに実現できますが、トータルでのコスト削減になるとは限らない点に注意が必要です。

人件費削減や、メニューブック印刷費用の削減といったコスト削減要素がある一方で、システム導入費用や月額費用、専用端末費用、ネットワークなどの設備費などの初期費用が確実に発生するからです。また客単価がダウンするという収益悪化要素もあります。

得られる利益がプラスになるかどうかは、

• 店舗スタッフの人件費
• 推奨販売の有無と売上貢献度
• メニュー構成　など

が複雑に絡みます。

セルフオーダーシステム導入を考えている場合は、それらをしっかり検討することをおすすめします。

セルフオーダーシステム導入で考慮するポイント

システムの導入にあたって、押さえておきたい重要な注意点がいくつかあります。以下、セルフオーダーシステムの3つの注意点について解説します。

まとまった初期費用が確保できるか

セルフオーダーシステムを導入する際には、ある程度まとまった導入コストが必要になります。タブレット型の場合、端末費用やシステム導入費用などを含めて、30卓程度の規模でも200万～300万円前後かかることが一般的です。準備できない場合は、より初期費用を抑えられる「モバイルオーダーシステム」も検討すると良いでしょう。

コスト削減効果は業態、客単価による

人件費削減は確実ですが、初期費用の他に月額費用などのランニングコストもかかることがあるため、トータルコストが削減されるとは限りません。それだけを目的にした導入は危険でしょう。

別途工事が必要な場合も

タブレット型のセルフオーダーシステムの場合、基本的には各テーブルに電源コンセントが必要です。現在設置がない場合は、その工事費も考えておく必要があります。長時間バッテリーなのでコンセント不要という場合でも、営業終了後に全機の充電作業が発生する可能性があるため、その作業量は考慮しておかなければなりません。

サポート体制をチェック

予期せぬトラブルでセルフオーダーシステムが使えなくなると、店舗は大きな影響を受けます。特に飲食店は深夜帯や休祝日に稼働していることも多いため、365日24時間対応してくれるサービスであれば安心です。安定して運用を続けるためにも、サポート体制の充実したシステムを選びましょう。

セルフオーダーの進化版！スマホを使ったモバイルオーダーも

店舗側が専用端末を用意するのではなく、お客様自身のスマートフォンを利用して注文を行う「モバイルオーダー」の普及も進んでいます。モバイルオーダーは、端末費用は0円なので導入コストが安く、テーブルトップオーダーと比較して手軽に始められるというメリットがあります。

QRコードを利用するタイプは、コードを読み取るだけで注文画面を表示することができ、アプリダウンロードなどは必要ないため、お客様の負担が少ないのも魅力です。タブレット型システムに移行する前のステップとして導入する方法もおすすめです。

まとめ

セルフオーダーシステムをうまく活用すれば、お客様の満足度を上げたうえで、人件費などのコストを削減できる可能性があります。しかし一方で接客機会の減少や客単価減少などのデメリットもあります。

オーダー回数の多い大規模店や店舗スタッフの人手不足に悩んでいる店舗などでは、導入を検討してみるとよいでしょう。また、導入費用がかけられない店舗では、モバイルオーダーの導入もおすすめです。