
経営者にとって、店舗運営の拡大はメリット・デメリットの両方がある選択肢です。複数店舗の運営は売上拡大のほか、共通コストの圧縮や従業員のモチベーション向上など様々なメリットがありますが、リスクを抑えなければ失敗してしまう可能性もあります。
本記事では、多店舗経営を失敗する主な原因と、失敗しないためのポイントを説明します。後半では多店舗展開するタイミングについても紹介しますので、最後までぜひチェックしてください。
多店舗経営を失敗する主な原因
多店舗経営を成功させるためには、自店の成功要因を把握し、自店にあった立地に出店する必要があります。まずは多店舗展開を失敗する主な要因を見ていきましょう。
売上につながりにくい経営戦略
多店舗展開を成功させるためには、既存店の売上の元となっている強みを新店舗にもそのまま活かすことが重要です。しかし、この強みが何であり、どういった経営戦略によってそれが生み出されているかをきちんと把握しておかなければ、新店舗の経営にもそれを活かすことができません。
既存店の分析が甘いと、新店舗の経営戦略が売上につながらない可能性があります。こういった経営戦略は定期的な見直しが必要です。まずは、自店の経営戦略の分析をきちんと行いましょう。
店に合っていない立地
主な失敗の2つ目は、自店の強みと客層のニーズが合致しない立地に出店してしまうことです。エリアによって、求められる商品やサービスのニーズは変わります。
本来であれば自店の強みが活きる場所に出店するのが一番ですが、そうでない場合は、その客層に合った商品やサービスを提供できるよう、変わる必要があります。
不十分な人材育成
多店舗経営する店を任せる人材や、働くスタッフの育成が十分にできていないと、当然多店舗展開も失敗します。昨今、日本では少子高齢化を原因とした人材不足で、人材育成が追いつかなくなっている店舗が増えています。
多店舗展開においては、提供する商品やサービスの知識だけでなく、コンセプトや経営方針まで浸透させる必要があります。人材育成により、これらのノウハウを末端まで行き届かせなければなりません。
運営コストの増加
新店舗の運営が軌道に乗るまでは、そこで発生する費用が全体の収支を圧迫し赤字になってしまう可能性があります。多店舗展開により、仕入れなどはスケールメリットが働き単価が安くなる場合があります。しかし、家賃や人件費、材料費、水道光熱費、広告宣伝費等の経費は、店舗ごとに固定で発生してしまいます。売上が低い序盤では単店赤字に陥ってしまう可能性があります。
多店舗経営を失敗しないためのポイント
主な失敗の原因が分かったところで、次は対策を見ていきましょう。多店舗展開を失敗しないための注意点を解説します。
立地は慎重に選ぶ
店舗経営にとって、立地選定は売上に大きく影響する要素です。自店の集客が見込める立地かどうか、慎重に見極めましょう。立地選定において重要なのは、店前通行量や家賃だけではありません。ターゲットとなる顧客はどのような機会に、どのような交通手段で自店にアクセスするのか、そういったことを細かく想像し、適切な立地を選定するのが重要です。
出店地域に合ったサービスを提供する
多店舗展開する上で、各店舗のクオリティやコンセプトを均一にすることは重要です。ただし、エリアによって、そのエリアに合った商品やサービスを提供することも重要です。
そういった商品・サービスを開発するためには、地域の顧客が持っているニーズを把握することが重要です。SNSやアンケートなど、顧客とのコミュニケーションの接点を作り、どのようなものが求められているのか適宜把握するようにしましょう。
従業員の教育用マニュアルを整備する
多店舗化する上で、準備しておきたいのが業務の標準化とマニュアル化です。多店舗運営する上では、どの店舗も既存店と同じ水準の商品・サービスを提供することが重要となります。そのためには、既存の業務を誰でもできるように標準化し、マニュアルにより自らがいなくとも教育できるようにすることが重要です。コンビニやファストフードなどのメガフランチャイズ店は、こういったマニュアルが整えられていることで人材育成を容易にしています。
出店のコストを抑える
店舗を開業するためには、多額の初期投資が必要となります。店舗の内装設備、什器、家具、各種備品など、要所要所でコストを抑えることが重要です。こういったコストを抑えるための対策としては、居抜き物件を借りることや工事をなるべく自らで実施すること(DIY)、中古の備品を購入することなどが挙げられます。居酒屋で瓶ビールケースを椅子にしているのも、コストを抑える例といえます。
業務を効率化するためのシステムを導入する
店舗数が増えるにつれ、オーナーにかかる業務負担は重くなります。POSレジを導入し、店舗運営を効率的に行いましょう。POSレジは売上管理や在庫管理、顧客管理などの幅広い機能を有しており、これまで店長が紙やペンといったアナログなやり方で行っていたマネジメント業務の多くを効率化することができます。また、売上分析ができるようになるため、より高い売上を目指すための施策が考えやすくなります。
多店舗経営を検討するタイミング
ここまで説明した通り、多店舗展開は、事前準備が必要です。経営者が多店舗経営を検討すべきタイミングはいつなのか、見ていきましょう。
既存の店舗の経営が安定したとき
多店舗経営を成功させるためには、既存の店舗の運営が順調であることが大切です。
その理由としては、新しく展開する店舗の売上が安定するまで、既存店舗の収益で全体の運営コストをカバーする必要があるためです。
また、資金調達に融資を活用する場合は、融資を受けるための審査において返済能力の有無を問われることとなります。既存店舗の利益は返済能力に直結しますので、まずは既存店舗でしっかり利益を上げるようにしましょう。
マネジメントできる人材が育ったとき
お金以上に大切なのが、人材です。既存店舗と新店舗、どちらにもマネジメントを行う店長は必要です。どちらも自分で行おうとすると、細かい所に目が行き届かなかったり、従業員とのコミュニケーション不足が発生してしまいがちです。現時点でマネジメントできる人材がいない場合は、まずは既存店にてマネジメント人材の育成に力を入れるほうがよいでしょう。
事前準備で多店舗経営の失敗を防ごう
今回は、多店舗経営の失敗の原因と対策について説明しました。
多店舗展開する上では、自店のコンセプトや経営方針をきちんと理解した上で、適切な立地を選んだり、人材育成の中でそれらを従業員に徹底することが重要です。
しかしそれらを実行するためには、まず既存店の業務を効率化し、多店舗展開の準備に充てる時間を作り出さなければなりません。
POSレジなどのシステムを活用し、業務効率化を図りましょう。