
確定申告や税務調査の時に、税務調査官から固定資産と消耗品に関する会計処理の間違いを指摘されることがあります。この2つに関しては、調査官が必ず確認する項目ですので注意が必要です。
しかし、以上2項目の会計処理の誤りについては、税理士が申告した時、または月次の会計管理の時に気づくことが大半のため、見落としの心配をする必要はないでしょう。
とは言え、固定資産と消耗品の区分けすべてを税理士にお任せするのではなく、お店を経営していく経営者の皆さんも、それらの判断基準について知っていた方がいざという時に役に立つでしょう。
なぜなら、たとえ消耗品でも年間購買方針を立てて計画的に行わなければ、決算時に消耗品ではなく固定資産に計上しなくてはならない場合がでてくるかもしれません。こういった事態を引き起こさないためにも、固定資産と消耗品の判断基準に関するしっかりとした知識を身につけることが大切なのです。
そこで今回は、店舗運営をする上で大切な固定資産と消耗品の判断基準についてご紹介いたします。
固定資産とは

固定資産とは、企業や事業所の活動の基礎となる、長期間継続して使う資産のことです。固定資産には、以下3種類あります。
- 有形固定資産といい、土地、建物、機械、車両運搬具、工具備品など。
- 無形固定資産といい、営業権、特許権、実用新案、商標、借地権、ソフトウエアなど。
- 投資有価証券、長期貸付金、出資金などの投資関係。
投資、及び土地以外の有形・無形の固定資産は、時間の経過や使用によって消耗したり、価値が低下したりします。この消耗や低下した価値を減価償却により費用化するのが、現行の会計法です。
固定資産とは、流動資産に対して固定資産と呼ぶ会計学上の概念であり、企業や事業所が長期に使用するためのものであって、貸借対照表の日付から起算して、1年を超えて使用する設備や資産のことです。
消耗品とは

企業会計の消耗品とは、使用可能期間が1年未満、または取得価額が10万円未満のものを言います。
では、使用可能期間が1年未満のものとはなんでしょうか。これについて国税庁の説明によると、法定耐用年数で見るのではなく、その企業の営業業務において一般的な消耗性のものと認識され、かつ、その企業の平均的な使用状況、補填状況などから見て、その使用可能期間が1年未満のものと定義されています。
これはつまり、企業や事業所、さらには業界によっても消耗品と思われる種類が異なるため、その判断は、各企業なり事業所が独自に行う必要があるということです。判断する基準は1年でなくなってしまうもの、1年で使用価値がなくなってしまうもの、取得価格が10万円未満のものとはどのようなものかなど、常識的、慣例的、習慣的な要素が前提となります。
例えば文房具、インク、名刺、伝票類、電球、印鑑、机、椅子、食器類、調理機材、掃除機、ソフトウエアー、パソコン、応接セット、内装備品などです。
ただし、パソコンや応接セット、厨房設備など、その構成が複数の部品や商品で成り立っている場合は、それぞれの価格が10万円未満であってもセットで合計すると10万円を超えてしまえば、消耗品とはなりません。このケースでは固定資産の器具備品が勘定科目となり、決算時の減価償却が必要となります。
固定資産と消耗品の判断基準

ここまで、固定資産と消耗品の違いについてご紹介しました。前節までをお読みいただければ、固定資産と消耗品の違いを判断する基準は、耐用年数と取得価額が基になっているということがお分かりいただけたかと思います。耐用年数は1年、取得価額は10万円が判断の基準となりますので、これ以上か以下かをしっかりと見定めて、固定資産なのか消耗品なのかを判断していきましょう。耐用年数は、耐用年数表と呼ばれる表に記載されます。減価償却は、この耐用年数表に基づいて算出されているのです。以下に、簡単な例として飲食店関係の耐用年数をご紹介いたしますので、参考にしてみてください。
- 内装工事 木造・合成樹脂 20年
- 内装工事 木骨モルタル 19年
- 内装工事 ブロック造り 38年
- 内装工事 金属造り 19年~31年(骨格材の肉厚により異なる)
- アーケード(建物付帯設備) 15年
- 店舗簡易装備 3年
- 電気設備(照明含む)蓄電池電源設備 6年
- 給排水、衛生設備、ガス設備 15年
- 小型車両(0.66L以下) 4年
- 事務用品、机、椅子 15年
- パソコン 4年
- 時計 10年
- ソフトウエア 3年
- 他
■固定資産の取得価額20万円未満の場合
10万円を超える場合、原則として耐用年数表に基づいて減価償却をする必要がありますが、償却資産税はかかりません。20万円未満の場合は、3年間の償却「一括償却」が簡易的に認められています。
一括して償却額や残存価額を償却資産台帳で管理されていることを前提として、償却資産税(固定資産税)はかかりません。
■固定資産の取得価額30万円未満の場合(青色申告の中小企業者に限る)
10万円を超えて取得価額が30万円未満の場合は、全額経費で落としてもよいことになっています。これを「即時償却」といいます。即時償却は無制限に行えるわけではなく、年間300万円までと定められています。
また、即時償却を行った旨を償却資産台帳に載せる必要があり、償却資産税もかかります。しかし、租税特別措置法が適用されることにより、平成30年3月31日を超えれば償却資産税はかかリませんので、時限的な税金と言えるでしょう。
償却資産税の税率は残存価額×1.4%であり、課税対象額が150万円未満であれば課税されません。つまり、固定資産台帳における残存価額の合計が、150万円未満であれば課税されないということになります。
固定資産と消耗品の判断基準についてではありませんが、以下に会計上の固定資産と消耗品の仕訳方法について、例題を交えてご紹介いたします。こういう方法もあるということだけでも、ぜひ頭の片隅にいれておいてくださいね。
パソコンの耐用年数は上記のように4年です。使用可能期間は該当しませんので、取得価額で判断します。
例題①
現金で8万円のパソコンを購入した場合は消耗品費です。
よって仕訳は
借方:消耗品費 貸方:現金 金額80,000 摘要:パソコン購入
となります。
例題②
1台20万円のパソコンを購入した場合
仕訳は
借方:器具備品(固定資産) 貸方:現金 金額200,000 摘要:パソコン購入
そして、決算時に償却が必要ですから、
仕訳は 借方:減価償却費 貸方:器具備品 金額50,000 摘要:パソコン減価償却費計上 パソコンの耐用年数は4年ですから、当該年度の減価償却費は5万円となります。
まとめ

いかがでしょうか?
消耗品か固定資産は、業務用に供していることが前提ですが、10万円という取得価額がキーポイントとなります。それ未満なら無条件で消耗品費となります。
固定資産と消耗品の判断基準を整理してみましたので、この記事を参考にしてください。