

和食、洋食、中華の中から選ぶなら和食を選ぶという人が若い世代にも増えています。ランチでもハンバーグや唐揚げなどより、焼き魚や煮魚定食を好む傾向が強まっています。和食人気は国内に限ったことではなく、海外セレブにも和食ファンが多く、東京の老舗料理店のリピーターになってひんぱんに訪れる人もいるといいます。なぜ、和食はそれほど人気があるのでしょう。ずばり、和食が健康によくヘルシーだと言われているからではないでしょうか。
そこで今回は、和食の魅力と和食をメニューに取り入れる際のポントについて見ていきましょう。
和食とは?

「和食」という言葉は、江戸時代の鎖国が終わった後、外国から入ってきた西洋料理(洋食)に対して日本古来の料理という意味で使われるようになったものです。「すきやき」や「肉じゃが」「お好み焼き」などは今や和食の代表格ですが、仏教国の日本では開国まで動物性食品を摂ることが禁忌(タブー)とされていましたから、厳密にいえば和食ではなく「和風料理」ということになります。
さて、和食は2013年にユネスコの無形文化遺産に登録されました。以来、和食はヘルシー料理として世界中から注目されるようになり、訪日旅行者の目的も、観光やショッピングを押さえて「食事」が第一位にランキングされています。2020年のオリンピック・パラリンピック開催に向けて、ますます和食人気が高まっていくことが予想されます。
和食がヘルシーといわれる理由

ユネスコが無形文化遺産として認定したのは、お寿司や天ぷらなどの単品料理ではなく、ごはんを主食とする「日本の伝統的な食文化」全般を対象としています。具体的には、次の4点が評価されたものです。
1.多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重
日本各地に、その土地に根差した食材があり、素材の持ち味を生かすためにさまざまな調理法や調理道具が生み出され、発達してきました。こんぶやかつお節から作る「だし」のうま味成分を利かせることで、素材の持ち味を引き立てます。調味料をあまり使わなくても十分おいしくなるので高血圧予防に役立ちます。
2.栄養バランスに優れた健康的な食生活
和食の献立は「一汁三菜(いちじゅうさんさい)」を基本としています。ごはんと漬物に、汁物1品と野菜や魚を使った料理3品のことで、栄養バランスの取れた理想的な献立として評価されています。魚は不飽和脂肪酸(EPA・DHA)を豊富に含むいわし、さば、さんまなどの青背魚を用いるので、肥満や動脈硬化の予防にも役立ちます。
3.自然の美しさや季節の移ろいの表現
懐石料理や会席料理に見られるように、春は料理に桜の花をあしらったり、夏は涼しげなガラスの器に盛りつけるなど、季節感を表現することも和食の特長です。食材は旬のものを使います。旬とは野菜や魚が成熟した時期を意味し、味がよいのはもちろんのこと栄養価も最も高い状態にあります。ほうれん草で見てみると、旬のものは季節外のものに比べると2、3倍も栄養価が高いといわれます。
4.年中行事との密接な関り
正月にはおせち料理、春彼岸にはぼたもち、お盆には精進料理、中秋の名月には月見団子、冬至にはかぼちゃの煮物というように、年中行事ごとに伝統のごちそうを作り、食事の時間を共にすることで、家族や地域との絆を強めてきました。一家団らんや地域との交流は、とくに子供の心身の発達に大きな影響をもたらすといわれます。
こうしたすばらしい和食文化が海外の食文化に押されて消えてしまうことのないように、これからも大事に継承していくべきであるとして無形文化遺産に登録されたのです。
和食のヘルシーな食材・調理法

和食が健康食として海外から注目される理由には、次のような点もあげられます。
発酵食品
発酵食品とは、かびや酵母、細菌などの微生物の発酵作用を生かして製造するもので、納豆、味噌、醤油、漬物、日本酒、みりんなどがあります。洋食のパンやヨーグルト、チーズなども発酵食品ですが、種類の多さでは日本が世界一といわれます。それは、味の淡白なごはんをおいしく、たくさん食べるために味の濃いものが必要だったことと、高温多湿の気候風土が大きくかかわっています。
発酵食品の効用には、「長期保存ができる」「栄養価がアップする」「独特のうま味成分や香りが生まれる」などがあります。近年、納豆菌は腸に入ると善玉菌を増やして悪玉菌を減らし、さらに腐敗物質を減らす働きもあることがわかり、これまで海外では嫌いな和食の1位だったのが、今では「納豆パワー」として注目を浴びています。
海藻
こんぶやわかめなどの海藻は、アルギン酸やフコダインなどの水溶性食物繊維が豊富で、糖尿病や高血圧、高コレステロール血症などの予防効果があります。ほかにもカルシウム、マグネシウム、亜鉛、クロムなどのミネラルが多く含まれているため、骨粗鬆症や貧血、冷え、肌荒れ、抜け毛などの予防・改善に役立ちます。
動物性油脂を多用しない
和食の調理法は、主に「煮る」「焼く」「蒸す」「生」の4通りです。日本で食用油を使うようになったのは安土桃山時代からで、一般家庭の食卓に油炒めや天ぷらなどが並ぶようになったのは明治時代中期からとされています。煮たり焼いたりする調理法は、バターやラードなどの動物性油脂を使う西洋料理に比べると、低脂肪・低カロリーに仕上げることができます。
ヘルシーで訴求して集客アップしよう

メニューに和食を取り入れる場合は、一汁三菜を基本に献立を考えるといいでしょう。三菜は、主菜1つ、副菜2つの組み合わせにします。なお、和食だからと肉を避けることはありません。肉は必須アミノ酸を含む良質のたんぱく質ですから、調理法を工夫してむしろ積極的に取り入れるようにしたいものです。
- 主菜……魚や肉、卵、大豆製品などたんぱく質を含む食材を用います。ランチであれば焼き魚や煮魚、豚の生姜焼きなど。ディナーであれば刺身の盛り合わせ、肉ならすき焼きやステーキなど豪華な印象のものがいいでしょう。
- 副菜1……旬の野菜の炊き合わせが一般的です。春ならたけのこ、ふき、うどの山菜の炊き合わせが定番です。
- 副菜2……おひたしや和え物など小鉢のおかずです。野菜サラダも副菜になります。
- 汁物……通常は味噌汁です。おかずの食材とのバランスを考えて、具だくさんの味噌汁にしたり、澄まし汁にするなど、ワンパターンにならないようにしたいものです。
一汁三菜より豪華なものにしたいという場合は、本格的な会席料理を取り入れてみるのもいいでしょう。その場合は、先付から始まって、前菜、吸い物、お造り(刺身)、煮物、焼き物、揚げ物、酢の物、止め椀(味噌汁)とごはん、水菓子(デザート)の二汁七菜が一般的です。
一品ずつ順番に出すのが本来の配膳のしかたですが、品数を少なくして松花堂弁当風に詰め合わせて一度に配膳する方法もあります。
集客アップのためには、古いしきたりにとらわれることなく、伝統料理のよさを取り入れて、何よりもお客様に楽しんでもらうことを優先するようにしましょう。
まとめ

和食がもたらす健康効果を要約すると、次のようになります。
- だしのうま味を利かせることで薄味に仕上げることができる。
- 一汁三菜の献立で必要な栄養素をバランスよく摂取できる。
- 魚や野菜は「旬」のものを使うため、味も栄養価も損ねることがない。
- 腸内環境を整える効果のある発酵食品が多い。
- 海藻を摂ることで、糖尿病などの生活習慣病の予防効果が得られる。
- 動物性油脂をあまり使わないため、洋食より低カロリー、低脂肪。
ごはんとみそ汁、焼き魚と煮物の一汁三菜にこれほどの健康効果があるとは知らなかったという人も多いのではないでしょうか。家庭料理にしてもだんだん洋風化され、それとともに肥満をはじめとする生活習慣病が増えています。こんな時代だからこそ、和食をメニューに取り入れ、お客様の健康増進をバックアップしてあげましょう。