

クーポンというと来店客に配るものや、折込チラシなどで無料配布するイメージがありますが、実は「有料」で消費者に購入してもらうタイプのものもあることをご存知でしょうか。それがクーポンサイトと言われるところで購入するものです。
一時期はまさに世の中を席巻し、今はそれよりも少し下火になっていますが、飲食店にとっては、適切な使い方をすればまだ活用の意義はあります。
そこでここではクーポンサイトを使ってどのように集客すればよいのか、そして今おすすめのクーポンサイトはどこなのか、ということについてご紹介します。
クーポンサイトとその仕組みとは

飲食店が配布するクーポンは、ホットペッパーなどのサイトや、折込チラシなどの独自販促、あるいは来店客へレジで渡す、などの方法で「無料」で配布するものが多いですが、消費者に先に有料で購入してもらうクーポンもあるのです。それを「共同購入クーポン」と言います。
その内容は、長い時間をかけずに非常に短い時間で実施する「フラッシュマーケティング」と言われるものの1つで、クーポンサイトという専用のサイトで、商品・サービスの大幅割引や特典などのついたクーポンを期間限定で販売する販促手法です。そして一般的には、24時間や48時間といった制限時間内に一定人数以上の申し込みがあった場合のみ、そのクーポンを販売するということになっています。
グルーポンというサイトを例にとりますと、「飲食店が5000円の食べ放題コースを50%オフで300名限定で販売する」という設定をしたとします。それを購入した人は2500円で食べ放題を利用できますが、一方で飲食店には残りの2500円からさらに50%がグルーポンの手数料として差し引かれ、1250円のみが入金されるという仕組みです。
つまり、飲食店にとっては5000円の食べ放題を1250円で販売したことになります。実質75%の割引です。これでは平均原価率の30%を割ってしまい、赤字です。飲食店としては考えられないほどの値引きということです。
では、販売促進費として考えてみます。クーポンサイトに支払う金額が1,250円×300枚=375,000円、そして値引き分が2,500円×300枚=750,000円。合計で1,125,000円です。
仮に折込チラシで300人の新規客を集めようしている場合と比較してみます。折込チラシの平均レスポンスはよくても0.5%ほどです。1組3人だとして100組を集客するためには、最低2万枚のチラシを撒く必要があります。折込料と印刷代が1枚10円くらいですからその合計が20万円、そして10%のクーポンをつけたとして、300人×5000円×10%=150,000円、合計で350,000円になります。したがって、販売促進費としてもかなり破格の出費になります。
にもかかわらず、これが飲食業界を席巻するほど流行ったのはどういう理由があるのでしょうか。それにはやはりメリットも大きいからです。それを以下に挙げていきます。
飲食店にとってのクーポンサイトのメリット、デメリット

クーポンサイトのメリット
まずメリットから挙げていきましょう。それには以下の5点があります。
・メリット1
クーポンの販売が、たとえば300枚限定で250人以上の申し込みがないと販売しないという条件を設けていた場合、申し込みが250人未満の時には販売は成立しません。したがって飲食店からクーポンサイトへの手数料の支払いは0円です。また250枚から300枚に間で売れた場合は、実際に売れた枚数に応じて手数料を払います。
つまり、完全成果連動型の広告ということになります。先に比較した折込チラシの場合は、レスポンスが0.1%しかない場合でも折込料と印刷代は発生しますから、場合によっては1組の集客に莫大な費用をかけることになるリスクがあります。このようなリスクはクーポンサイトにはありません。
・メリット2
このクーポンを購入する人のほぼ99%は新規顧客です。「行ってみたかった飲食店がクーポン企画を出しているので行ってみよう」といった来店のきっかけ作りです。クーポンサイトの活用で新規顧客が獲得でき、そのお客様がリピートしてくれれば、継続的に売上が上がると期待できます。
・メリット3
クーポンには利用期間を設けられます。繁忙期に75%値引きの来店があっても困りますが、閑散期に期間を設定すれば、その閑散期の固定費を回収する対策になります。
・メリット4
意外に多いのがクーポンを購入したが結局来店しない、という人です。平均すると10%~15%は存在します。この人たちには返金はしませんから、費用として発生するのはクーポンサイトに支払う1,250円だけで、残りの1,250円は100%不労収入になります。300枚の15%が使用されなければ、約6万円が利益になります。
・メリット5
多くのクーポンにはドリンクなどは含みません。しかし実際に食事をした場合は半数以上の人がドリンクを頼みますし、場合によっては追加料理もオーダーします。したがって、実際にはその分の粗利も利益になり、上で挙げた1125000円は全額費用になるのではなく、そこからこの分が差し引かれ、思ったよりは費用がかからない、ということもよくあります。
このようにメリットがあるので、クーポンサイトを利用する飲食店はなくならないのです。
クーポンサイトのデメリット
もちろん同時にデメリットもあります。最大のデメリットは原価割れでの料理提供ですがそれ以外にも、以下の3点が挙げられます。
・デメリット1
傾向としてこのようなクーポンの利用客はリピートしにくい、ということがあります。普段は値段が高い、自分の普段の食の傾向と合わない、などの理由で利用していない場合でもクーポンがあったので来店してみた、という場合が多いのです。したがって、よほど1回目の利用で満足しない限り、2度目を利用しようと思いません。
・デメリット2
このような割引だけを狙っている消費者というものが確かに一定数存在します。その人たちが来店するので、その店が比較的上質な雰囲気をコンセプトにしている場合、一般的に言うとお客様の質が落ち、店の雰囲気が悪化する可能性があります。それはリピーター離れの危険性にもつながります。
・デメリット3
閑散期に設定した場合でも、1度に大量の来店が発生してしまうと満席になりウェイティングが発生します。それによって、2と同じようにリピーター離れを起こす危険性があります。
このように、クーポンサイトを利用する場合はメリットとデメリットを考えて判断することが重要です。
デメリットを軽減する方策も
最大のデメリットの負担を軽くする方法としては、そもそもの値引き率を50%から30%に下げる、という方法もあります。これであれば、負担はかなり減りますが、しかし集客力は下がる可能性もあります。
さらに、裏技としては、通常5,000円で販売しているコースを「クーポンサイト特別コース」として、若干内容を変えて7500円の定価にしてしまう、ということです。これであれば1人1,875円の利益ですが、原価は1,250円のままですから、赤字にならず、少しですが利益が出るのです。ただし、7500円と言っても実は5000円と同じ内容だったという評判が立つと、自店舗の深刻なダメージになりますから、実施するのであれば慎重な検討が必要です。
さらにサイトへの掲載方法として、店舗の写真ではなく料理写真を美味しそうに見せる、料理内容をきちんと説明する、などの方法をとることでも購入率を高め、それによってデメリットを軽減させることもできます。
まとめ

いかがでしょうか。
一時期の勢いはないとはいえ、消費者の中では依然としてクーポンサイトはメリットがあり、利用者はそれほど減っていません。上で挙げたようなメリットとデメリットを比較し、そのうえでコストを最低限に抑えられるような工夫をして取り組んでみることは、新規客の集客や閑散期対策としては、いまだに十分有効だと言えるでしょう。