
これまでの居酒屋といえば、会社の同僚や友人と仕事帰りに酒を酌み交わす場所というイメージをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、最近では昼の時間帯に女子会や同窓会などの目的で居酒屋を利用するケースが増えています。なかでも、個室でのランチ会や昼宴会を行いたいと考える層が増加しているとされる昨今では、昼の時間帯における居酒屋個室の予約を取るのは難しいという店舗も少なくありません。
そこで今回は、個室のある居酒屋がランチ営業を始めるにあたって押さえておきたいポイントについてご紹介いたします。
個室でランチ利用する人が増えている?

夜の営業がメインだった居酒屋が、昼間のランチ営業を始めたことで売上を伸ばしているとされる店舗が増えています。しかし、昼食を提供するランチ営業は、以前から多くの居酒屋において行われています。では、なぜ昼間のランチ営業の導入が、売上を伸ばすことに繋がっているのでしょうか。その要因として、最近の居酒屋におけるランチ営業は、食事だけでなくお酒も楽しんでもらう「昼宴会」「ランチ宴会」といったプランを用意して、集客力を上げているところが多くなっているからだとされます。
昼宴会として利用する客層は、子育て真っ最中のママ友同士や、子育てが一段落した専業主婦、現役を引退したシニア世代などが大半を占めています。その理由として、子育て世代は小さな子どもを連れて夜の酒席に参加することはできませんし、専業主婦にしても夜に自分ひとりだけ家を空けるのは難しいからとされます。その点、昼であれば子育て中のママから専業主婦の方まで、気兼ねなく出掛けられるのです。
では、シニア層についてはどうでしょうか。いくら仕事をリタイアしたといっても気力は十分で、経済的な余裕もあるのではないかと思われる方もいらっしゃるでしょう。しかし、多くのシニア層の場合、加齢に伴う体力の低下によって、夜遅くまで外でお酒を飲むのは体力的に難しいでしょう。また、夜遅くまでの飲み会は家族も心配することがあるため、昼間の宴会を要望するシニア層が増えているのです。
様々な事情を抱えた昼宴会を利用する層からは、とくに個室居酒屋の人気が高く、いつも予約でいっぱいというお店が少なくありません。なぜ個室が選ばれるのか、その理由を以下で簡単にまとめてみましょう。
- 自宅にいるようなプライベート性を保ちつつ、家では食べられない本格料理を味わえる
- レストランのようなおしゃれな居酒屋が増えているので、女子会にも利用しやすい
- 完全個室であれば周囲から遮断されるため、にぎやかなところが苦手な人でもくつろげる
- 他人に聞かれたくない話でも、安心して話せる。声をひそめて話す必要がない
- 幼い子どもを連れているときも、ほかのお客様に迷惑をかける心配がない
- 呼び出しブザーが設置されているので、追加注文をするのも手間取らない
そのほか、プロジェクター・スクリーンを用意しているお店では、仲間内だけで好きな映像を見ながら親睦を深めることもできます。
個室がある居酒屋がランチ営業をするメリットは

次に、ランチ営業を取り入れるお店側のメリットについてご紹介いたします。
追加費用なしで営業できる
居酒屋の多くは、夕方の17~18時ごろに開店しています。しかし、居酒屋における家賃などの経費は、開店をしていない昼間の時間帯の分も発生しています。そのため、昼間の営業を始める場合は、追加費用をほとんどかける必要がありません。仮にランチ営業での利益が少ない場合でも、本来は店舗の休眠時間帯なので、赤字にさえならなければデメリットよりもメリットが多くなるでしょう。
食材ロスを減らせる
夜の営業で使い切れなかった食材をランチに回すことで、食材費を抑え、ロスを軽減することができます。居酒屋のランチが多くの利用者から好評な理由は、夜と同じ高級食材を使った料理を安く食べられるというコスパのよさにあります。刺身用の魚が残った場合は煮つけやフライにしたり、野菜は小鉢の付け合わせにしたりしてランチで提供すれば、メニューのバリエーションが増え、お客様にも喜んでもらえるでしょう。
大量仕入れで原価率を低くできる
ランチの食材と夜の食材を同じものにすれば大量仕入れが可能になるため、原価率(売上高に対する原材料費の比率)を低く抑えることができます。
夜のスタッフを有効に活用できる
夜の営業のみであっても、仕込みや開店準備のために早く出勤するスタッフが必要です。そうしたスタッフたちにランチ営業の際も働いていただければ、新たに人員を採用する必要がありません。アルバイトの方の中には、収入が増えるなら長時間働きたいという人もいますから、そのようなスタッフにランチ営業から開店準備までを担当してもらうと良いでしょう。キッチンスタッフも、コース料理を設定しておくことで段取りよく調理を進めることができるので、少人数でも無理なく対応することができます。
このように、うまく工夫をすれば家賃や食材費、人件費もランチ営業のために追加する必要がありません。つまり、ランチ営業は経費のことをあまり考えなくても導入できるというわけです。
ただし、「夜の営業で利益が思うように出せないから昼の営業で補おう」と考えるのは危険です。ランチ営業で成功している店舗でも、そもそもランチで利益を出そうとは考えていません。「ランチで店の味や雰囲気を知ってもらうことで夜の売上拡大につなげていく」という発想がランチ営業の原点であり、あくまでも販促活動の一環ととらえているのです。
ランチ営業を取り入れて赤字が続き、夜の利益を圧迫するようでは元も子もありません。ランチ営業でどのような結果を出せるか、事前にシミュレーションしてみることが大切です。
個室ランチを提供する場合のメニューは?

個室ランチメニューのポイント
ランチ宴会は、ドリンクから始まりデザートで締める一般的なコースメニューとほぼ同じメニュー構成です。夜の宴会と違い、飲酒より食事がメインというお客様も多いのため、ノンアルコールやスパークリンクワインなど軽めのドリンクを飲み放題で提供するのが一般的だとされます。
和風居酒屋なら、刺身、煮物、焼き物、揚げ物、ごはん物の5品程度の会席御前が好評です。お弁当スタイルにする場合は、春は「花咲御前」、冬は「淡雪御前」などのネーミングで季節感を表現すると、高級感がアップする効果があります。
そのほか、手間のかからないチーズフォンデュの食べ放題などを昼限定で提供している店舗もあります。忘年会シーズンであれば、鍋やすき焼き、しゃぶしゃぶなどが定番です。
最近では、SNSに投稿するために料理の写真を撮るのが当たり前の光景になっています。お店にとっても大きな宣伝効果が得られますから、できるだけインスタ映えする盛り付けを心がけると良いでしょう。
個室ランチメニューの価格設定
昼宴会の価格は、完全個室で2時間飲み放題、全5品で3,000~3,500円が平均とされます。3時間で全9品の豪華版となると、一人当たり10,000円というコースもあります。
誕生日や記念日など、特別なイベントのための宴会では、メッセージ付きケーキ、花束プレゼント、記念写真撮影などのサービスを付加することも多いようです。
まとめ

いかがでしょうか?
昼宴会プランを始めたのは、ランチにお酒を注文するシニア層が多いことに目をつけた、ある居酒屋といわれています。ランチでも会社員を主なターゲットとするランチ営業では、アルコール類などの飲み物を注文することがない分、客単価が低いため利益を多く見込むことができません。しかし、ママ会やシニア層を対象とした昼宴会は飲み物の注文もあるため客単価が上がり、利益を出すことが十分可能です。
居酒屋の昼宴会は今後も需要が伸びると予想されていますが、導入する際は店舗の立地や客層、競合店の有無など、マーケティングリサーチを行ったうえで判断することが大切です。