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支払時に現金を使用しないキャッシュレス決済は、今や来店動機の一つにもなっており、売り上げや作業効率に大きく貢献します。
しかし、導入コストが気になったり、どのような決済法を選べば良いか分からなかったりといった理由で、導入に二の足を踏んでいる飲食店も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、キャッシュレス決済の種類とその特徴を始め、メリットとデメリット、導入の際の注意点についてご紹介します。
キャッシュレス決済とは

キャッシュレス決済とは、現金を使用せずに支払いをすることです。
キャッシュレス決済と聞くとクレジットカードを思い浮かべるかもしれませんが、それ以外にもさまざまな手段が用意されています。
代表的なキャッシュレス決済の種類と特徴

それでは、代表的なキャッシュレス決済の種類とその特徴、また代表的なブランドをご紹介しましょう。
クレジットカード
代表的なブランド:VISA、Master、JCB、アメリカン・エキスプレス、Diners Club、DISCOVERなど
クレジットカードを利用すると、クレジットカード会社がまず支払いを立て替えます。その後で決まった決済日に口座から利用した金額が引き落とされます。
銀行やスーパーのポイントカードなどに付帯していることが多く、今では一人複数枚所持していることが当たり前になっています。所有者が多いこと、専用の機器にカードを通すだけで手軽に使えることが魅力です。
「キャッシュレス・ロードマップ2020」の報告によると、クレジットカードでのキャッシュレス決済は9割以上を占めており、クレジットカードがキャッシュレスを牽引する状況が続いています。
しかし飲食店側からすると、専用機器の導入費用や手数料がかかり、コストがかさむ決済方法でもあります。その点については後ほどご紹介します。
電子マネー
主な決済ブランド:Suica、PASMO、WAON、nanaco、iD、QUICPay、楽天Edy など
電子マネーでは現金をデジタル化し、電子データのやり取りで決済を行います。キャッシュレス決済が普及する以前から、SuicaやICOCAに代表される交通系電子マネーが活用されていました。かつてこういった電子マネーはプリペイド式と呼ばれ、あらかじめ現金をチャージしておき支払いを行うという決済法が一般的でした。
しかし現在では、クレジットカードと紐付けし、クレジットでの支払いを行うクレジット系電子マネーが増えています。タッチ決済で手軽に支払いができる点が魅力で、支払い時間の短縮にも役立ちます。
QRコード・バーコード決済
主な決済ブランド:PayPay、楽天Pay、LINEPay、メルペイ、auPay、ファミペイ など
スマートフォンでQRコードやバーコードを読み込んで支払いを行う決済方法の総称です。スマートフォンにクレジットカード、電子マネー、銀行口座などを登録して支払いを行います。普段持ち歩いているスマートフォンで支払いができ、カードの盗難や紛失によって第三者にお金を使われてしまう心配もありません。また、店舗側にとっても導入費用が安いという大きなメリットがあります。費用については後ほど詳しくお話します。
キャッシュレス決済のメリット

キャッシュレス決済は決済をスピーディーにするだけではなく、売上や顧客数のアップ、従業員の負担や衛生面でのリスクの軽減など、さまざまなメリットがあります。詳しくご紹介しましょう。
来店の動機になる
飲食店を訪れる際、キャッシュレス決済ができるかどうかでお店を選ぶという人も増えています。
特に海外からの旅行客にとって、キャッシュレス決済が日常化していること、為替コストが高いこと、日本の貨幣の扱いに慣れていないことから、キャッシュレス決済ができるかどうかは非常に重要なポイントになります。
消費増が期待できる
先ほどご紹介した通り、キャッシュレス決済は来店動機になりますが、さらに来店した際の消費が増える可能性があります。その理由は以下の2点です。
【1】ポイ活やキャンペーン利用
ポイント還元率がアップしている、キャッシュバックがあるといったキャンペーンを実施しているキャッシュレス決済に対応していると、ポイントをできるだけ集めようとする顧客が増え、消費増が期待できます。
【2】キャッシュレス決済による支出増
クレジットカードは実際にお金を支払っているという感覚が薄れるため、現金での支払いより支出が増える傾向にあります。アメリカの医学博士であるデヴィット・クルーガーが著した「お金のシークレット」では、ある調査にて、クレジットカードを使うと、現金や小切手を使っているときに比べて支出が23%も増加することが分かったと書かれています。
以上2点のことから、キャッシュレス決済にするだけで、来客数だけではなく客単価の増加につながる可能性があります。
参考文献:お金のシークレット デビット・クルーガー著 神田昌典監訳 三笠書房 2010年
現金管理が容易になる
現金のやり取りを行う場合、数え間違いやお釣りの渡し間違いといったトラブルが発生することがあります。また、現金チェック(レジの数値と実際の現金が合致しているか調べる作業)に時間がかかるうえ、もし合致しない場合は合致するまでチェックを繰り返さなくてはなりません。
それに加え、現金を取り扱う場合、釣銭が不足することもあります。銀行に両替に行くとなると時間がかかりますし、両替手数料も決して安くはありません。
上記のようなレジチェックや両替を行うのは主に店長やマネージャーであり、彼らが業務から抜けることで生産性やサービスの低下にもつながります。
キャッシュレス決済を取り入れることで、現金チェックや両替の手間を大きく減らすことが可能です。コスト削減や生産性の向上が期待できるだけではなく、人手不足の対処にもなりえます。
衛生面のリスクの減少
現金は不特定多数の人が触っているため、菌やウイルスが付着している恐れがあります。特に現在では、新型コロナウイルスの感染拡大により感染対策への意識が強くなっているため、現金の取り扱いには注意が必要です。調理やホールの担当者がレジを行わなければならない店舗もありますが、顧客からするとそのような店は不潔であるとみなされ、来店を控える、クレームになるというにもなりかねません。
キャッシュレス決済を利用すれば、現金に触る機会を減らすことができ、衛生面のリスク減少につながります。
キャッシュレス決済のデメリット

多くのメリットを持つキャッシュレス決済ですが、もちろんデメリットも存在します。キャッシュレス決済を導入する前に、デメリットについても把握しておきましょう。
×費用がかかる
キャッシュレス決済導入には端末購入などの初期費用、通信費や決済手数料などのランニングコストが必要です。費用は決済方法や依頼する会社によって異なりますが、大まかにご紹介すると以下の通りです。
必要な費用 | 決済方法 | ||
クレジットカード | 電子マネー | QR・バーコード決済 | |
スマホ・タブレット端末 | 数万円~ | 数万円~ | 無料の場合あり |
決済用端末 | 無料~数万円 | 無料~数万円 | なし |
月額費用 | 月額3,000円~ | 月額3,000円~ | 月額3,000円~ |
決済手数料 | 3.24~3.74% | 3.24~3.74% | 0~3.24% |
このように、キャッシュレス決済の導入や運用にはある程度のコストがかかります。キャッシュレス決済を導入する際には、導入することによるメリットとコストを比較して検討することが重要です。
ただし、最近では手数料0円のキャンペーンや導入費用が無料になるサービスも充実しており、キャッシュレス決済における導入コスト軽減の動きが見られます。
×すぐに収入が手元に入ってこない
現金の決済であれば、すぐに手元に現金が入ってきます。それに対しキャッシュレス決済は、決済方法や事業者によって違いがありますが、振り込みは月1~3回に限られている場合がほとんどです。
仕入れの支払いやお釣りの準備などで現金が必要な場合、手元に現金がなくて困ることもあるかもしれません。決済手数料と併せて、振込スケジュールも確認しておくようにしましょう。
キャッシュレス決済の選び方

前述の通り、キャッシュレス決済にはさまざまな種類があるうえ、同じ決済方法でも多くの企業からサービスが提供されています。選択肢が多い点はメリットですが、あまりに多過ぎてどれを選べばよいか分からなくなってしまいそうです。キャッシュレス決済を選ぶ際には、以下の4点に気をつけると良いでしょう。
利用者が多い
当然のことながら、キャッシュレス決済の利用者を増やすためには、なるべく利用者の多い決済法を選ぶ必要があります。先ほどのデータで示した通り、利用者の多さという点ではクレジット決済が一番適しています。
コストが安い
費用がかかるというキャッシュレス決済のデメリットへの対処法として、初期費用および運用費用の安い方法を選ぶという手段があります。先ほどご紹介した通り、スマートフォンを利用したQRコード決済は事業者が導入費用を負担するためお得な決済方法といえます。また、決済に対する手数料もなるべく安いものを選びましょう。
出店地域や客層に合っている
出店する地域や客層もキャッシュレス決済を導入する際の選択材料になります。例えば自店が地方にある、もしくは年配の顧客が多いという場合、スマートフォン決済はまだ浸透しておらず、導入しても期待するほど利用者が増加しない恐れがあります。
条件によっては、キャッシュレス決済として一般的に普及しているクレジットカードの方が良い場合もあります。
キャッシュレス決済導入時の注意点

キャッシュレス決済は導入するだけでは意味がありません。キャッシュレス決済を使うのは人、つまり従業員と顧客です。キャッシュレス決済をスムーズに使えるようにするためには、「人」に対してどのようなことをすれば良いのでしょうか。
従業員の教育
キャッシュレス決済は今までの現金決済とは異なる機器を使い、異なる手順を踏まなくてはなりません。単に通常の決済ができるだけではなく、顧客の誤操作や機器トラブルなどのイレギュラー発生時にも対応できるよう、従業員への教育を徹底しておきましょう。実際に使用する前に研修を行うとともに、トラブルシューティングや通信障害発生時の連絡先なども分かりやすくマニュアル化しておくと良いでしょう。
宣伝
せっかくキャッシュレス決済を導入しても宣伝しなくては意味がありません。自店のウェブサイトやSNSでキャッシュレス決済が利用できることを知らせましょう。飲食店の情報サイトや雑誌に自店の情報を載せている場合は、キャッシュレス決済を始めたことを伝え、情報を更新してもらうようにすることも必要です。
まとめ
キャッシュレス決済は来客数や売上の増加が望めるだけではなく、決済がスムーズになる、情報管理が容易になるなど多くのメリットがあります。しかし、キャッシュレス決済の恩恵を効率的に享受するためには、自店に適した方法を選ぶこと、使う人への周知を徹底することが求められます。その点に留意して、店舗経営において大きなプラスになるようなキャッシュレス決済の導入を目指してください。