
花屋を開業するために、特別な資格などは必要ありません。そのため、開業はしやすい業種といわれますが、成功するのは一部です。一般的には起業後1〜2年で7〜8割が廃業するとされている厳しい世界なので、しっかりとした計画と準備は必要不可欠です。
そこで本記事では、花屋を開業するまでに必要な事前準備と流れ、持っておくと有利な資格などを解説します。安定して利益を上げるポイントも解説するので、独立開業を予定している方は参考にしてください。
よくある花屋の種類
花屋は売られている商品カテゴリーによって何種類かに分けられます。ここでは代表的な3種類を紹介します。
切り花を売る花屋
切り花とは蕾(つぼみ)や咲き始めの生花を切り取ったもので、枝や茎を付けたまま提供します。鮮度が重要なため、冷蔵ショーケースなどで保存しなければいけません。多くの花屋が扱っており、花1本の販売から花束の制作まで幅広い要望に応えるお店が多いです。
供花や献花、仏花を売る花屋
お悔やみやお供えに関する花を売る花屋は、地域や宗教によって扱う花が異なるのが特徴です。また、この種類の花屋の店員は、地域ごとの特性や宗教の違いについて幅広い知識を持つことが多いです。お寺やお墓の近くにある花屋は仏花の需要が高い傾向にあります。
プリザーブドフラワーやドライフラワーを売る花屋
プリザーブドフラワーとは草花を保存加工したもので、ドライフラワーとは草花を乾燥させたものです。これらを使ったフラワーアレンジメントを販売する花屋も多いです。フラワーアレンジメントは見た目が華やかで、自宅のインテリア用やギフト用、結婚式場やイベント会場の装飾用など、さまざまな用途があります。
花屋の開業で持っていると便利な資格
花屋の開業に資格は必須ではありませんが、他店との差別化や集客力アップにつながるものもあります。ここでは取得すると便利な資格を3つ紹介します。
フラワー装飾技能士
花の装飾に関する唯一の国家資格で、花束やブーケ、葬儀場の供花の制作など幅広い技術を持つ証明になります。取得するには、都道府県職業能力開発協会が実施する学科試験と実技試験に合格する必要があります。
技術の高さを顧客にアピールできますし、フラワーアレンジメント教室の開催にも役立つでしょう。なお、実務経験の長さによって受験できる級位(1〜3級)が違うので注意してください。
フラワーデザイナー資格
公益社団法人日本フラワーデザイナー協会が認定する花の装飾に関する資格で、一般的な認知度は特に高いです。花を使った装飾や造形物の制作に関する、企画力やデザイン力の証明になります。
こちらも1〜3級の級位があり、1級では技術と知識に加え、自分で考えて創り出す能力が問われます。
カラーコーディネーター
東京商工会議所が認定する資格で、色の性質や特性、仕事に役立つ実践的な色彩の知識がある証明になります。花束やフラワーアレンジメントの制作、ラッピングに色彩の知識を活かせるのがメリットです。
花屋においては、理論に基づいた花の組み合わせやラッピング選びができるので、品質向上やリピーター獲得につながります。
花屋の開業に必要な準備と始めるまでの流れ
主な花屋の種類と便利な資格が理解できたら、オープンまでの具体的な手順を押さえておきましょう。色々な手続きが発生するので、早めの準備が大切です。
Step1.事業計画を作る
まずは開業する花屋のイメージを固めて事業計画を立てましょう。ターゲットとなる顧客層や利用シーン、価格設定、品揃え、立地などを考えて、お店のコンセプトを定めます。それに応じて、必要な経費(開業資金、運転資金、家賃など)と毎月の売上などを事業計画に盛り込みます。
Step2.開業資金を調達する
自己資金だけで開業資金が足りない場合は、資金調達を検討しましょう。一般的な調達方法として、民間の金融機関や日本政策金融公庫からの融資が選択肢に挙げられます。このうち、日本政策金融公庫からの融資は、初めて独立する方にとって融資のハードルが低いとされています。また、自治体の補助金・助成金制度なども確認すると良いでしょう。
なお、各助成制度には申請条件があり、期限内に必要書類を提出することが必須です。融資を受けるまでに時間がかかることもあるので、活用する際は注意してください。
Step3.出店の仕方を決める
花屋の出店の仕方は主に3つあります。それぞれのメリット・デメリットを確認し、コンセプトに合った販売スタイルを選べるようにしましょう。
店舗を借りる
物件選びから内外装工事まで全て行うため、花屋の雰囲気に合った立地に、こだわりの店を開けます。ただし、店舗代や改装費、保証金、敷金、不動産手数料など、かかるコストが高い傾向にあります。その他、花用の冷蔵庫、ディスプレイ用の棚、資材費なども必要なので、中古品を使うことも検討しましょう。ホームページの運営も欠かせないので、インターネット環境も必要です。
自宅を改装する
自宅の一部を花屋の店舗として利用すれば、開業時の初期費用を大幅に抑えることができます。賃貸料など家賃関連のコストもなくなりますし、内装工事によってイメージ通りの店内にすることも可能です。一方で、内装工事費用は高くなりがちですし、家族のいる方なら事前の了承が必要です。あとは、自宅の周辺環境と店舗で扱う花のニーズがマッチしているか分析をすると良いでしょう。
ネットショップを出店する
実店舗を持たないため、店舗の所有や改装に費用がかからないのが魅力です。また、注文分の花だけを仕入れるため、廃棄ロスによる利益率の悪化を防げるのもメリットです。ただし、場所を問わずに運営できるため、競合店は多いです。そのため、ネットショップを出店する場合は、顧客に選ばれやすくなるような個性的なサービス・商品を提供するなどの差別化が大事です。
Step4.物件を探して工事をする
店舗を借りて開業する場合は、物件を探して内装・外装の工事をする必要があります。その際は、花を飾るスペースや備品を置く場所、花を色鮮やかに見せるための照明の設置など、花をキレイに飾る工夫すると良いでしょう。
Step5.仕入れルートを確保する
花の仕入れ先は花卉市場や仲卸など複数あるので、店舗の準備と同時にルートを探す必要があります。まずは開業する花屋のイメージに合った花を「いつ」「どのように」「どのくらい」仕入れるか検討しましょう。花は長持ちしないので、売上が見込める量を見極めて仕入れることが重要です。
なお、開業初期には仲卸業者やインターネット販売などで花を仕入れるのがおすすめです。仲卸業者とは、卸売市場でセリ売買によって仕入れた花を小売業者に向けて販売する業者で、新規参入者の仕入れ先にはぴったりです。
一方、花の卸売市場では買参権と呼ばれる許可が必要なため、新規参入者は花の購入が難しいとされていて、買参権の取得には過去の仕入れなどの実績が求められます。
Step6.什器や備品を購入する
開業する花屋のイメージに合わせて什器や備品を購入しましょう。花を陳列する棚や作業台、花の鮮度を保つフラワーキーパー、レジ周りなどは店のデザインにも関わります。また、花器やハサミ、花のラッピング用品などの備品も必要に応じて用意しましょう。
Step7.開業の手続きをする
開業後1ヶ月以内に、管轄の税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出しましょう。確定申告で青色申告を希望する場合は「所得税の青色申告承認申請書」も提出します。
ちなみに、開業前にチラシやSNSで宣伝広告をすれば、ファンがついてくれる可能性があります。特にSNSは無料で始められますし、開業準備の様子をアップすれば認知度が徐々に高まるのでおすすめです。
花屋の開業ではお店の方向性やコンセプトを明確にしましょう
花屋の開業では、お店のコンセプトを固めたうえで綿密な事業計画を立てることが大切です。コンセプト次第で花屋の種類、出店方法、必要な経費、用意する備品などが変わるので、自分に合った経営ができるよう準備しておきましょう。
資格は必須ではないものの、取得を通じて経営ノウハウを学ぶことができます。ビジネススキルを磨くのも良いですし、フラワーアレンジメントの資格を取って教室を開講しても良いでしょう。いずれにしても資金調達やホームページ制作など、他にもやるべき手続きは多いため、計画的に開業するのがポイントです。